連休は京都、大阪、滋賀を巡ってきました。
滋賀ではあまり聞かなかったのですが、大阪と京都では「おおきに」をよく聞きました。
「おおきに」≒「ありがとう」。40代以上の方がよく話されている印象でした。
私の出身県、富山ではあまり感謝を表す方言は残っていませんが、80代くらいの年配の方は「きのどくな」をよく使います。「きのどくな」≒「すみません」です。
ニュアンスとしては「恐れ入ります」が近いでしょうか。
人に何かをしてもらったときの感謝を表す表現として、「ありがとう」と「すみません」が一般的かと思います。その二つの使い分けは厳密な決まりがあるわけではないと思うのですが、「すみません」の方がへりくだった言い方と、ニュアンスの違いを感じます。
「ありがとう」に近いニュアンスの方言と「すみません」に近いニュアンスの方言の分布には何か特徴が見られるかと思い、国立国語研究所、2002年発行の『方言文法全国地図』第5集にて「ありがとう」を調べてみました。『方言文法全国地図』はインターネットから表現の検索、地図の表示、印刷ができます。
まず、「ありがとう」系は最も分布が広く、多少の差はあっても全ての都道府県にあります。
「すみません」もよく使われていると思うのですが、この地図では埼玉、東京、栃木の関東圏、岐阜、静岡と鳥取、岡山、広島の内陸部、香川などに広がっています。
「おおきに」は京都、滋賀、福井、三重、奈良、和歌山、大阪、兵庫の近畿圏、高知と福岡、大分、宮崎、佐賀、長崎の九州圏、秋田、山形の日本海側に広がっています。近畿以外に分布があるのは意外だったのですが、海側が多いので、船で行き来があったのでしょう。
「きのどく」を使う地域は主に石川、福井、岐阜となっています。福井は「おおきに」の方が分布が大きくなっています。岐阜は「すみません」系が多く、「きのどく」、「うたてえ」と続いています。「うたてえ」≒「すみません」です。
この地図を眺めていると、内陸部の方が「すみません」に近いニュアンスの語が多いような気がします。また、標高は示されていませんが、山奥に多く分布しているように見られます。個人的な推測ですが、人の行き来が少なく、雪が多かったりして、生活がやや大変な地域では、人に何かしてもらうことが「ありがとう」よりも「すみません」となっていたのかなと感じました。逆に、活発な人の行き来があるところでは「すみません」よりも「ありがとう」なのではないかと。やはり人の行き来が多い≒都は京都だったのだなあとも思います。「おおきに」が広まっている地域は今でも観光に力が入っている地域ではないでしょうか。京都は人気の観光地ですし、九州も観光に力を入れているということが郷土料理のお店やJRの観光用車両からも感じ取れます。
今回は「ありがとう」の分布でしたが、『方言文法全国地図』では350表現の地図をインターネットで閲覧できます。旅先で気になる方言に出会ったら、眺めてみるのも面白いかもしれません。
参考URL:
http://www6.ninjal.ac.jp/dspace/handle/10600/573
http://www6.ninjal.ac.jp/gaj_map/02/
S. K.