子供のことば 前編

突然だが、私には、1歳10ヶ月になる息子がいる。「1歳半を超えると言語爆発が起きる」なんて言われているとおり、最近良くしゃべるようになってきた。

仮に名前を、けいたろうとしよう。けいたろうくんは、例えば、こんなことを言ったりする。
「あてぃーがたた」
これは「お仕事」のことである。「お仕事のなんたるか」など当然わからぬものの、なぜかPCを見るとこう言うのだ。モーラ数が一拍多いような気がするが、そんなものはご愛嬌だ。

そんなけいたろうくんは、男の子ということで、ご多分にもれず、メカメカしいものが好きだ。ミニカーを見せると、猫じゃらしに食らいつく猫のように食らいついてくる。いや、それは言い過ぎか。そんなに勢いが良くはない。が、いずれにせよ、ミニカーに寄ってくるのは確かだ。

外に出ても、真っ先に反応するのは、家の前の大通りを定期的に走る大きな四角い物体だ。それを見て、彼はこう言う。
「ばてゅ!」

箱形の乗り合い自動車を見てひとしきり喜んだあと、公園で泥遊びをする。が、広場に落ちている小さな固いかたまりが気になってしょうがない。彼は、それをつかみ、ポケットに詰めようとしてこう言う。
「いてぃ!」
詰めていたのは、「石」であった。

どろんこになったので、家に戻って手を洗う。そこで彼は、洗面所にひかえる四角い物体を見て、こう言う。
「たったっき!」
これは「洗濯機」のことである。
まぁ、こんな日常が続くわけなのだが、ここで話したいことは「けいたろうくんの日常」についてでも「けいたろうくんと四角い物体」についてでもない。そうではなくて、「けいたろうくんの言語」、もうちょっと詳しく言うと、「発音」についてである。

本題に入ろう。このエッセイを書く直前にゴールデンウィークがあったこともあり、一緒に過ごす時間を長く取れたので、これはいい機会とばかりに、発話を記録してみた。ついでに、簡易的に品詞分類もしてある。

* 名詞
たくてぃー/たってぃー(タクシー)、ばてゅ/ばた(バス)、にんでぃん/でぃんでぃん(にんじん)、あな (花, 鼻)、ぶーぶ(車)、ままま(バナナ)、でぃーたん/りーたん (りーちゃん、好きな女の子の名前)、みーたん(みーちゃん、あこがれの女の子の名前)、くてゅ(靴)、ぼうてぃ(帽子)、あぴあん(エプロン)、ぴーぽー/てゅーてゅーた(救急車)、てぃたとぅ(Tシャツ)、おてゅゆ(おつゆ、スープ)、いてぃご(いちご)、みおんたん(メロンさん)、とーゆ(豆腐)、あっとー(納豆)、なつゅ(ナス)、わんわん(犬)、ぼーゆ(ボール)、ごば/ごぼ(ゴボウ)、みか(みかん)、かぱぽ(たまご)、いてぃ(石)、ねてぃ(ねじ)、とぅっとぅ(トラック)、かっかっかっ(新幹線)、おてぃたたた(お仕事)、かぷ(カブ)、おい/あち(海苔)、かだ/かっちゃ(かぼちゃ)、にんにんに(ニンニク)、いでぃてぃ(ひじき)、おてぃごた(はしご車)、ごび(ごみ)、ぷーぷ(スープ)、がたーごと(電車)、まゆ/まぬゅ(丸)、おんも(おいも)、いび(海老)、ぱたぱた(ヘリコプター)、いが(イカ)、まん/ぱん(食事)、あっぱ(葉っぱ)、あとぅた(ルンバ)

* 指示代名詞
あってぃ(あっち)

* 社会語
かぁた(母ちゃん)、たぁた(父ちゃん)、ばぁたん(ばあちゃん)、ぽい(ゴミを捨てる時に言う)、がっこ/だっこ(抱っこ)、ばいばい、ばんだい/ばじゃーい(万歳)、こんばんはー、やいやい(いやいや)、んだ (「そうだ」の東北弁)、あいっ(はい)、ちっち(うんち)、ないない(しまうこと)、ねんね(寝ること)、あいち(おいしい)、いーかーいーかー(いいこいいこ)、あった(あった)、なーい(なくなった)

* 動詞(述語)
あてて(開けて)、でぃーてぃーたい(できない)、たたい(ちょーだい)、てて(とって)、たいたい(食べたい)

* 形容詞
かたいかたい(高い高い)、おもい/あまい(重い)、いたい(痛い)

* 副詞
かてぃーかてぃ(かちかち、固いものを見て言う)、てぃたてぃた(ひらひら?、花びらを見ると言う)、いっぱ(一杯)

さて、この発話データを見て何を思うだろうか?

・・・とここまで書いたところなのだが、当エッセイ的には結構な分量になってしまったので、一旦ここで話を切って、2回に分けようと思う。

次回は1週間後の更新の予定である。

M. K.