夢見た未来と今

あけましておめでとうございます。
近所の公園で小さな子が凧揚げをしていました。私も小学生くらいのころに挑戦してみましたが、少しでも揚がるととても嬉しかったことを思い出します。
さて、みなさまが小学生のころはどんな未来を想像していたでしょうか。
私が小学生のころに夢見た未来には、自動で目的地まで連れて行ってくれる乗り物や、腕時計ほどの電話、なんでも調べられるコンピュータ、そして家事や宿題を手伝ってくれるロボットがいました。21世紀になったらきっとこんな世界になるんだとわくわくしたものです。
21世紀になった今、飛行機や電車には自動運転装置がついていて運転する人間の負担を大きく軽減してくれますし、携帯電話は持っているのが当たり前のものとなり、インターネットにより膨大な情報を目にすることができるようになりました。工場ではロボットアームが精密部品を器用に組み立て、家では自動で床を掃除してくれる掃除機があります。
しかし、残念ながら友達や家族のように生活を共にできるようなロボットはいません。アニメや映画の中で見たそんなロボットは、まだまだ夢物語なのでしょうか。
ここにフランク・モス著「MITメディアラボ 魔法のイノベーション・パワー」という1冊の本があります。
「どうやったら実際に作れるのか見当もつかない、世界を変えてしまうインパクトをもったプロダクツを次々と生み出しつづける研究所」の秘密を、2006年から2011年までMITメディアラボの所長を務めた著者が紹介してくれます。
この本の中には、今実際に開発されている魔法のような技術(シックスセンス:どこでもタッチスクリーンにしてしまうウェアラブルデバイス、ハイパースコア:絵を描くような感覚で作曲ができるソフト、オートム:ダイエットコーチをしてくれる対話型ロボット…)とその未来がありました。
「第6章 ともに暮らし、ともに学ぶ」の冒頭でロボットのネクシーとの会話が紹介されています。「ネクシーは感情表現や社会交流ができるだけでなく、モーター付きの車輪で動くことができる。」またこの感情表現も多彩で、「幸せ、悲しみ、困惑、退屈の表情をすることができるし、目をパチパチとさせたり、眉を吊り上げたり、いぶかしげに首をかしげたりもできる。」のだそうです。
まさに「それ(イット)」ではなく「彼女(シー)」と呼びたくなるロボットです。
この章に、こんな一節があります。
「開発を始めて間もなく、ブリジールは人間らしく見えるロボットはおろか、人間らしくふるまうロボットを開発しても、何の意味もないことに気づいた。人間の有能なパートナーになるためには、人間と深く交流できる必要がある。少なくとも、人間の発するサインを理解し、それに対応できなければならない。考えてみれば、ペットでさえそれをやっているのだから!一方、人間もロボットの行動を理解できなくてはならない。」
ロボットに感情表現があることで、人は心から話せるようになるし信頼関係も生まれるのでしょう。
そう遠くない未来に、大切なパートナーとしてロボットと触れ合える日がやってきそうです。
参考文献:『MITメディアラボ 魔法のイノベーション・パワー』 フランク・モス著 千葉敏夫訳 早川書房 2012年

R.E.