2002年11月のコラム

どう書くか?

 文章を書くとき、書きたいことは決まっていても、「どう書くか」が悩ましいところです。
 文章の技術はとても奥深いものですが、ここではもう少し表面的な表記と呼ばれる、つまり文字遣いについて考えてみたいと思います。

 先月号でも「日本語は書き方によって印象が違う」ということがテーマになっていました。
 文章そのもの以前にどんな文字を使用するかにより印象やニュアンスが違ってしまう、ということです。

 書かれた文字には絵画の要素があるのは、日本や中国の古い書物を見ればよくわかります。
 美しい書体、余白、文字の大きさ、それらが一体となり書かれた内容を豊かにします。
 写経や漢字文のように文字の大きさや表記法を統一することで美を表現するものもあれば、万葉仮名を使って色紙に書かれた和歌のように、大きさや文字の方向も変化をつけ、同じ単語でも2度目に出たときは文字を変える、など手の込んだ表記法もあります。

 文章が印刷という方法を通して人の目に触れるようになると、美は統一の方向へ向かっていったようです。
 新聞や書籍の編集では「表記の統一」ということがうるさく言われています。
 一方、Webなど閲覧できる文章のように、書かれたものでも寿命が短くなってくると、表記はまた自由気ままな方向に向かっています。

 現代ではPCやワープロを使って文章をつづることが多いのですが、仮名漢字変換という技術により、私達の表記法は大きな制約を受けるようになりました。
 特別な工夫をしない限り、ワープロの辞書に登録されている文字しか使用できない、という現実があるからです。
 その制約の中で文章を書くことをやっているうちに、仮名漢字変換が教師の役目を果たし、私達の表記法に対する好みに影響を与えているに違いありません。

 今月はこんな面白くもない話題になったのには訳があります。
 ここまで辛抱して読んでくださった方は下の「アルバイト情報」を是非読んでください。
 表記に関して実験してくださる方を募集しています。

2002.11

文責:siba