2006年8月のコラム

 ナンポタ


日本語では漢字、ひらがな、カタカナ、そしてアルファベットも使用可能です。

そのうちの前者2種類で暮らそうとする人々がいました。

過去形なのは現在もそういう方がいらっしゃるかどうかわからないからです。

笑い話だと思う方もいると思いますが、敵国語の英米語を話してはいけないと言われ、野球のストライクは「正球」、ボールは「悪球」、審判はストライクを「よし1本」と言わねばならなかったのは、つい先の戦争中のことです。

現在もそういう人がいらっしゃるかどうか疑問だと私が思うのは、これだけパーソナルコンピュータが普及した現在では、全ての外来語の日本語への言い換えが不可能になりつつある、と感じるからです。



国立国語研究所は外来語委員会を組織し、2003年から「外来語」言い換え提案を行っており、提案があるとニュースでも話題になりますが、最近は「提案」そのものよりも、「適切な言い換えが見つからなかった」または「かえって分かりにくくなった」などの批判が出てい
ることの方が話題の中心になっているような気がしてなりません。

今年度の委員のお名前を拝見すると、「部首のはなし」(中公新書)で話題の中国文化史専攻の阿辻哲次氏(京大)、図書館学の恩師などもいらして、そのご苦労がしのばれます。



言葉は生き物で、刻々と変化していきます。

社内の本棚にあるデータベースのプログラミングのマニュアル本を開いてみましょう。

情報学の素人の方が見たら、主要な名詞はほとんど意味がわからないカタカナ語かアルファベット綴りなどという文章が珍しくありません。

アルファベット+カタカナ、アルファベット+漢字、漢字+カタカナの連語も見られます。

 「Table変数やDynaset変数を排他アクセスで開くと、(後略)。」

 「Listメソッドで返されたSnapshot変数では、他のSnapshot変数がサポートしているメソッドのいくつかをサポートしていません。」



長い連語ができれば短くする略語ができるのも日本語の常です。

有名人であればその姓名でさえ、略してしまいます。
古いところでは田村高廣、田村正和、田村亮の父で映画俳優の「坂東妻三郎」が「ばんつま」、新しいところではSMAPの「木村拓哉」が「キムタク」。

このキムタクのCMですっかりお馴染みになってしまった略語が「地上デジタル(テレビジョン)放送」の略語「地デジ」でしょう。

これは「漢字1語1音」+「カタカナ2音」です。

実は略し方としては、こういう形の略語はとても少ないのです。

試しに社内で集めてみました。

1音のことを専門用語で1モーラといいます。



●「漢字+カタカナ」の略語

■普通名詞

▲モーラ(1+2)

地デジ

二カメ 二番カメラ



▲モーラ(2+2)

筋トレ

外タレ

着メロ

卒アル 卒業アルバム 「卒業記念飲み会」ではない、念のため



▲モーラ(2+1)
格ゲ

卒パ 卒業記念パーティー



■固有名詞

品プリ

赤プリ

日テレ

日スポ

東スポ

中スポ 中日スポーツ

味スタ 味の素スタジアム



■元が一語でないかも

朝ドラ 朝のドラマ

連ドラ

昼メロ

朝シャン

冬ソナ

裏スマ



■前半が二文字目かも

二ステ 第二ステージ



■後半が略語でないかも

半ドア

半ケツ



●「ひらがな+カタカナ」の略語

さいスタ さいたまスタジアム2002



携帯電話会社を変えても、電話番号を変えなくてもいいという「番号ポータビリティ制度」が2006年10月24日開始ということで、キャリア(携帯電話会社)3社が合意したそうです。

この「番号ポータビリティ制度」は「ナンバーポータビリティ制度」ともいい、この長い連語が略されるのは時間の問題だと思いますが、「番ポタ」「ナンポタ」に加え、「MNP」(モバイルナンバーポータビリティの略)という新語も登場。

どの言葉が広く使われるようになるのか、あなたも考えてみませんか。

私個人としては、電話番号が変わる方が情緒があると思い、今の制度を惜しんでいるのですが。

文責:T.S.&R.Q.