2004年1月のコラム

<あらたしき>

1月も終盤、新年の気分はスッカリ吹っ飛んだ感のある今日この頃です。
とは言っても、2004年最初のメルマガですので次の歌から始めましょう。

新たしき 年の始めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事
読みを振ると
「あらたしき としのはじめの はつはるの
           きょうふるゆきの いやしけよごと」
有名な万葉集の最後を締めくくる歌であり、わかっている限りでは大伴家持の最後の作歌です。
(新学説を知らないため、その後の作歌が発見されている可能性はあります。)
さて、今回のテーマは「発音されるとき音の順番が入れ替わる」という言葉の現象です。
上の歌の中の「新たしき(あらたしき)」は「新たなリ(あらたなり)」と同じ根をもつ語であり、さらに言えば「改まる」「改める」とも根を同じくする言葉です。
それが「りっぱだ・すばらしい」「もったいない」という意味の「あたらし(仮借し)」と混同されて使われるうち、「た」と「ら」の順番が入れ替わり、ついに「新しい(あたらしい)」となった、とされています。
次の2つはどうでしょうか?
順番は違うが音が似ていて、意味も似ている。
もしかしたら、初めは同じ語だったのかな?とも思えますが。
おざなり:その場逃れに、いいかげんな言動をする
なおざり:真剣でない、いいかげんにして放っておく、深く心にとめない
よく区別がわかりません。
新聞などの使用例も区別があるような、ないような。
こんなのもあります。
インドの聖地として有名な「ベナレス」は「バラナシ」とも言います。
「ナ」と「レ(ラ)」の順番が入れ替わり、さらに母音「eaeu」が「aaai」と替わっています。
もっとも「バラナシ」は普通、表記には「v」を使い、「ベナレス」は「b」を使いますが、地元の人が言うのを聞いたイギリス人が音の順番を入れ違えて覚えたんだ、という想像をかきたてますね。
再び日本に戻って、昭和を知っている人にしか通じないかも知れませんが、東西の代表としてユーモラスな例を1つずつ。
東京代表は何と言っても「潮干狩り」でしょう。
潮干狩り(しおひがり)がヒオシガリ、さらにすごい人はヒヨシガリとなる。
関西系では、あるコワイ御兄さんから聞いた「カダラ(体)大事にせなアキマヘンデ」
では、今年1年の皆様のご健康をお祈りいたします。
2004.1

文責:siba