2006年3月のコラム

小さな矛盾

さて、誕生石というのをご存知でしょうか?1年の12の月のそれぞれに異なる宝石を当てはめたもので、その伝統は旧約聖書の時代にまで遡ることができるそうです。現代の誕生石は国によって多少の違いがあるのですが、一般的な日本の場合をご紹介すると以下のようになります。

1月:ガーネット  2月:アメシスト 3月:アクアマリン
4月:ダイアモンド 5月:エメラルド 6月:ムーンストーン
7月:ルビー    8月:ペリドット 9月:サファイア
10月:オパール  11月:トパーズ  12月:トルコ石、ラピスラズリ

月によって石は異なるわけですが、実は鉱物学的に見ると同じ鉱物が2回登場しているケースが2件あります。一つはルビーとサファイアで、この2つは同じアルミの酸化物で鉱物学的にはコランダム(Corundum)と呼ばれます。色の違いについては、大胆に単純化して言えば微量の不純物によって青くなったものがサファイア、赤くなったものがルビーということになります。同様のペアーに今月3月の石、アクアマリンと5月のエメラルドがあります。この2つは同じベリル(Beryl)という鉱物で、不純物の鉄分で薄い水色になったものがアクアマリン、クロムやバナジウムで緑色になったものがエメラルドと呼ばれます。この他にもベリルには無色透明のゴシュナイト、黄金色のヘリオドール、ピンクのモルガナイトなどが知られています。

さて、このあたりで言葉の領域に話を移しましょう。Berylは日本語では「緑柱石」と訳されています。これは、この鉱物を代表するエメラルドの緑と六角柱状の結晶の形に由来する言葉です。ところで、アメリカのユタ州にだけ産するベリルに、レッド・ベリル(Red
Beryl)と呼ばれるものががありますが。これは文字通り赤いベリルです。面白いのはこれを日本語に訳すと「赤緑柱石」という「丸い三角形」みたいな矛盾した言葉になってしまうことです。そのせいか、日本語でもそのまま「レッド・ベリル」と呼ばれています。というような話を数年前に読んだ時に気になったのが、中国語ではどう言うんだろう、ということです。
で、最近答が見つかりました。中国語で書かれた鉱物関連の本を見る機会があったのですが、そこには「紅緑柱石」と堂々と書かれてありました!中国語のニュアンスが分らないのですが、矛盾だとは感じないんでしょうか?気になります。今回は小ネタで「ちょっと面白い」言葉のご報告でした。また次回お会いしましょう。

2006.03

文責:KA